──「なんとなく流行っている色」ではありません
街中のポスターや広告、ショップのディスプレイを見ていると、「あれ、この色、どこも同じトーンだな」と感じることはないでしょうか。
じつはトレンドカラー(流行色)は、偶然そろっているのではなく、2年ほど前から世界規模で「仕掛けられている色」です。
ここでは、そのトレンドカラーがどのようなプロセスで決まり、広告やプロモーションにどう活かせるのかを整理してみます。
目次
2年前から動き出す「色の会議」
流行色づくりのスタート地点は、フランスに本部を置く「インターカラー(国際流行色委員会)」です。
加盟国の専門家が集まり、実シーズンの約2年前に「次のシーズンは、どんな世界観・ムードの色がふさわしいか」を話し合い、30〜50色ほどのカラーパレットを決めます。
ここで決まるのは、特定の“1色”というよりも、
- 時代の空気を表すテーマ(例:安心感、サステナブル、躍動感)
- それを象徴する色のグループ
- 質感や配色の方向性(マット/ツヤ、ソフト/ビビッド など)
といった「色の方向性」です。
日本からは、一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)がこの会議に参加し、情報を持ち帰ります。
日本独自の“補正”をかける JAFCA の役割
インターカラーで示された世界的なトレンドの方向性をもとに、JAFCAは、日本の生活者の志向や国内市場の特徴を調査しながら、「JAFCAファッションカラー」として国内向けのトレンドカラーを選定します。
- 実シーズンの約1年半前に、各分野のスペシャリストと会議
- 日本市場で受け入れられやすい色味に微調整
- アパレル、インテリア、自動車、家電など多様な業界に向けて情報発信
この段階で、ようやく「日本のトレンドカラー」が輪郭を持ちはじめ、メーカー各社が商品企画に反映していきます。
パントンやペイントメーカーの「カラー・オブ・ザ・イヤー」
一方で、世界的な色見本メーカー PANTONE(パントン) や、塗料・ペイントメーカー各社も、毎年「カラー・オブ・ザ・イヤー」を発表します。
パントンの選定プロセスは、
- ファッション、インテリア、プロダクトデザイン
- 映画や音楽、アート、SNSのトレンド
- 社会情勢や人々の心理状態
といった広範な情報を分析し、その年の「ムード」を象徴する色を1色(あるいは数色)に凝縮する、というものです。
これらの発表はニュース性が高く、メディアやSNSでも話題になりやすいため、
「今どき感」のあるカラートーンを示す指標として、広告やプロモーションでも参考にされます。
なぜ、そこまで早く決める必要があるのか?
トレンドカラーが2年も前から決められている理由は、ものづくりのリードタイムにあります。
- 糸・生地・素材メーカーは、1〜2年前から開発・生産計画を立てる
- ブランドやメーカーは、その素材を見ながら商品企画・デザインを検討
- 展示会や商談会を通じて、流通・小売へと波及
といった流れがあるため、色の方向性が早い段階で共有されていないと、シーズンごとの「売場の統一感」が生まれません。
結果として、街のショーウィンドウや量販店、ECサイトのサムネイルなどに似た色が並び、
「今年はこの色が流行っている」という印象が、生活者側にも自然に刷り込まれていきます。
トレンドカラーを動かす“見えない背景”
トレンドカラーは、単に「目新しい色」ではなく、その時代の価値観や不安・希望を映す“鏡”のような存在です。
たとえば近年は、
- サステナビリティ志向 → 自然を想起させるグリーンやアースカラー
- デジタル化・メタバース → ネオン系、ブルー〜パープルのグラデーション
- 先行き不透明な社会 → やさしいパステルや、安心感のあるニュートラルカラー
など、社会のムードが色選びに強く影響しています。
広告・プロモーションにおいても、「今の生活者が何に不安を感じ、何に癒しや希望を求めているのか」という視点でトレンドカラーを読み解くと、
単なる流行追随ではない、“感情に寄り添う配色”がしやすくなります。
広告・販促でトレンドカラーを活かす3つのポイント
最後に、広告や店頭販促でトレンドカラーを取り入れる際のポイントを3つに整理します。
1. コーポレートカラーを「主役」、トレンドカラーは「名脇役」に
企業やブランドには、すでに認知されているコーポレートカラーがあります。
それを無視して毎年色を大きく変えてしまうと、ブランドの一貫性が損なわれるリスクがあります。
- ロゴや基本トーン:コーポレートカラーを軸に
- トレンドカラー:アクセントや背景、パターンの一部として活用
という役割分担を意識すると、ブランドらしさと「今年らしさ」を両立できます。
2. ターゲットの年齢・カテゴリーごとに“彩度と明度”を調整
同じトレンドカラーでも、
- 若年層向け:彩度高め・コントラスト強め
- シニア層向け:明度高め・彩度控えめで目にやさしく
といった調整を行うことで、見やすさ・読みやすさとトレンド感のバランスが整います。
特に屋外広告や交通広告では、視認性のよいコントラスト設計が重要です。
3. オンラインとオフラインで「色の体験」をそろえる
WebサイトやSNSのバナーで使う色と、ポスター・店頭POPの色味が大きくずれていると、
生活者が受けるブランドイメージもブレてしまいます。
- デジタル用(RGB)と印刷用(CMYK)で、近似色をきちんと設計
- 写真や動画のトーンもトレンドカラーに寄せる
- シーズンテーマカラーを1〜2色に絞り、媒体ごとにぶれない運用
といった工夫で、OOH・店頭・Web・SNSが一体となったカラーコミュニケーションが可能になります。
まとめ:トレンドカラーは「戦略的なコミュニケーションツール」
トレンドカラーは、どこかの誰かが感覚的に決めているわけではなく、
国際組織・専門機関・各業界のスペシャリストが、2年という時間をかけて練り上げる“戦略的な色”です。
その背景を理解したうえで、
- ブランドの個性
- 生活者の心理
- 表現する媒体の特性
この3つを結びつけて色を選ぶと、単なる「流行追い」ではなく、
メッセージを伝える力を持ったカラー戦略として、トレンドカラーを味方につけることができます。
(広報担当)