自分の作品は、自分で守る時代へ──クリエイターのための新しい「意思表示」のしくみが始まります

コラム

長い時間をかけて生み出した作品が、気づかないうちに誰かに使われていたとしたら──。そんな不安を抱えたことのあるクリエイターは、決して少なくないはずです。音楽を作る人も、漫画を描く人も、写真を撮る人も、映像を編集する人も。デジタルの世界では、作品はあっという間に広がり、あっという間に「誰のものか」が曖昧になってしまう。

そうした現実に対して、ひとつの大きな動きが始まっています。


文化庁が新システムの運用をスタート

文化庁が2026年2月26日、「個人クリエイター等権利情報登録システム」の運用をスタートさせました。音楽・漫画・映像・写真・アニメ・ゲームなど、さまざまなジャンルで活動する個人クリエイターが、自分の作品情報と「第三者がその作品を使っていいかどうか」の意思を、公式に登録できるプラットフォームです。

登録にはマイナンバーカードによる本人認証が必要で、作品名・公表日・URL・利用の可否(要相談・不可・著作物ごとに選択)などを入力する形式になっています。つまり、「この作品はOK」「あの作品はNG」「まず相談してほしい」といった、クリエイター自身の細かいニュアンスを、世の中に向けてきちんと伝えられるようになったということです。


作品を「使いたい側」にも、新しい検索窓口が

あわせて公開された「分野横断権利情報検索システム」も注目に値します。作品を使いたいと考える企業や個人が、このシステムを通じてクリエイターを検索し、利用可否の確認やコンタクトができるようになりました。つまり、探す側にとっても「ちゃんと許可をとれる場所」が整備されたわけです。作り手と使い手の双方にとって、これまでより格段にスムーズなやりとりが可能になります。


背景にある「未管理著作物裁定制度」とは

このシステムが整備された背景には、2026年4月から施行される「未管理著作物裁定制度」があります。これは、権利者が不明な著作物について、文化庁長官の裁定と補償金の支払いを条件として、適法に利用できるようにする制度です。制度の趣旨は理解できる一方で、「自分の作品が勝手に使われてしまうかもしれない」というクリエイター側の懸念も、当然ながらあります。

今回の登録システムは、そうした懸念に先手を打つための仕組みです。事前に「私はここにいます。私の意思はこうです」と登録しておくことで、意図しない形での作品利用を未然に防ぐことができる。いわば、クリエイター自身が自分の作品に「旗を立てる」行為と言えるでしょう。


「権利がある」と「権利を伝えられる」は別の話

これまでも、著作権はすべての作品に自動的に発生するものでした。しかし「権利があること」と「その権利を社会に伝えられること」は、別の話です。個人クリエイターにとって、権利の主張や管理は決してかんたんではなく、専門家に頼るほどでもないと感じてしまう場合も多かった。今回のシステムは、そのハードルを大きく下げる可能性を秘めています。


まずは「旗を立てる」ことから始めよう

まずは自分の作品をこのシステムに登録してみること。それだけで、作品に対するあなたの姿勢と意思が、世界に向けて明示されることになります。プロとして活動しているクリエイターはもちろん、趣味で発表している方にとっても、一度確認しておく価値は十分にあるのではないでしょうか。

創る力を持つ人が、その力をきちんと守れる環境へ。その一歩が、いよいよ動き出しています。

(広報担当)

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