デジタルサイネージジャパン(DSJ)2026が、6月10日から12日まで幕張メッセで開催された。Interop TokyoやAI NATIVE EXPOなどと同時開催で、会場全体の来場規模は約15万人。各社の出展情報やレポートを追うと見えてくるのは、サイネージが「壁にかかった四角い画面」という枠から、完全にはみ出し始めているということだ。大きく、自由な形に、そして賢く——この3方向への進化が、配信する側にも制作する側にも新しい宿題を突きつけている。
AIが「その場」でコンテンツを最適化する時代
今回のDSJが画像認識AIやAI関連の展示会と同じ会場で開かれたことは、象徴的だと思う。サイネージとAIは、もはや切り離せない関係になっている。
天候・時間帯・その場にいる人の属性に合わせて、表示するクリエイティブを自動で差し替える。雨の日に傘や温かい飲み物を、平日夕方に総菜を——といった出し分けが、人手を介さず動き始めている。海外では通行者の年齢層や表情をリアルタイムで解析して広告を選ぶ事例も広がっており、「誰が見ているか」に合わせて中身が変わるのが当たり前になりつつある。
データと自動化が「作る・出す」の手間を変える
もう一つの潮流が、コンテンツ制作と配信の自動化・内製化だ。今回の出展でも、専門的な動画編集スキルがなくても社内でサイネージ用の動画を作れるツールや、複数拠点の画面をクラウドで一元管理する仕組みが多く紹介されたと伝えられている。
これまでサイネージ運用のネックは、「素材を作り続ける負担」と「更新の手間」だった。そこが自動化されれば、少人数の事業者でも鮮度の高い情報を出し続けられる。作る側の裾野が一気に広がる変化だと感じる。
大型化・自由形状、そして社会課題への対応
そして近年最も存在感を増しているのが、画面そのものの進化だ。ガラス面をそのまま映像化する透明LED、柱に巻き付く曲面ディスプレイ、天井やカーブした壁面への設置——四角い16:9のモニターという前提が、静かに崩れている。バルコが4:3の製品を投入するなど、アスペクト比の選択肢自体が広がっている点も見逃せない。
同時に、社会課題への目配りも進む。共陰極駆動という方式で消費電力を最大30〜50%抑えるモデルが登場し、電気代高騰への現実解になりつつある。災害時の情報表示や多言語対応など、「広告」以外の公共的な役割も期待が高まっている。空間そのものを演出する装置として、サイネージの居場所は確実に増えている。
「16:9の常識」が崩れた先で
大きくなり、形が自由になり、賢くなる。この流れは、配信する側にも制作する側にも「決まった型に流し込む」発想からの転換を求めてくる。設置する場所、企画の狙い、使う用途——そのひとつひとつに合わせて、映像も運用も設計し直す必要がある。手間は増えるが、それはそのまま表現の自由度が増えたということでもある。
京都の街なかでも、駅や商業施設、店頭でサイネージを見かける機会は年々増えている。地域の事業者にとっても、「どんな画面に・どんな形で・誰に向けて出すか」を考えることが、これからの販促の面白い部分になっていくと感じている。
(広報担当)