写真やデザインで色が変わる理由

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制作物の「色ズレ」を防ぐために知っておきたい基礎知識

デザインや写真に関わる仕事をしていると、「モニター上では綺麗に見えていたのに、印刷すると色味が違う」「スマホで見ると急にくすんで見える」といった経験をされた方も多いのではないでしょうか。こうした色の不一致の背景には、RGBカラー空間の違いが大きく関係しています。

この記事では、RGBカラー空間とは何か、代表的な色空間の違い、そして制作時に注意すべきポイントについて解説した上で、「キャリブレーションの必要性」という本質的な結論に迫っていきます。

RGBカラー空間とは?

RGBとはRed(赤)・Green(緑)・Blue(青)の光を加算的に混ぜることで色を表現する方式です。これは「加法混色」と呼ばれ、ディスプレイやスマートフォンなどの光を発するデバイスで使われています。

ただし、同じRGBでも「どの範囲までの色を再現できるか(=色域)」は、カラー空間ごとに異なります。代表的なRGBカラー空間は以下の通りです。

  • sRGB:最も一般的で、Webやスマホ向けの標準色空間。
  • Adobe RGB:印刷向け。sRGBより広い色域で緑や青が鮮やかに。
  • Display P3:Apple製品に多い広色域。Adobe RGBと似るが赤に強み。
  • ProPhoto RGB:主に写真のRAW現像で使われる非常に広い色域。

ProPhoto RGBとは? 写真家向けの色域

ProPhoto RGBは、Adobe LightroomやPhotoshopなどの現像ソフトでよく使われる広色域のカラー空間です。RAWデータの色を可能な限り保持するために設計されており、人間の可視域に迫る色域を持っています。

ただし扱いには注意が必要です。

  • ほとんどのモニターがProPhoto RGBを正確に表示できない
  • Webや印刷用に変換する際、色が破綻しやすい
  • 誤ってこのまま書き出すと、意図しないくすんだ表示になる

そのため、ProPhoto RGBは「現像作業中の一時的な色空間」として使い、最終的にはsRGBやAdobe RGBに変換するのが一般的です。

なぜカラー空間を意識すべきか?

カラー空間の違いは、制作物の完成度に大きく影響します。例えば、Adobe RGBで作った画像をsRGB環境で見ると、意図した鮮やかさが失われ「くすんで見える」ことがあります。これは、表示側がその色を再現できないために起こる現象です。

Webブラウザ、スマートフォン、印刷物など、表示・出力される媒体ごとに基準とされる色空間が異なるため、目的に応じた適切な選択が重要です。

【用途別:推奨カラー空間】

用途推奨カラー空間
Web・スマホ表示sRGB
印刷Adobe RGB(印刷所に確認)
写真のRAW現像ProPhoto RGB(後に変換)

制作時に気をつけたいポイント

モニターの色域を確認:例「AdobeRGB 99%対応」など。

ソフトのカラーマネジメント設定を統一:Photoshop/Illustratorなど。

ファイル書き出し時のプロファイルに注意:WebならsRGBが基本。

印刷所やクライアントとカラー空間の共有:意図した色を再現するにはコミュニケーションが重要。

キャリブレーションの必要性(結論)

いくら正しいカラー空間を選んでも、モニターが正確な色を表示できていなければ意味がありません。これを解決する手段がキャリブレーションです。

キャリブレーションとは、X-RiteやDatacolorなどのツールを使い、モニターの表示色を補正する作業のことです。これにより以下のような効果が得られます。

  • 印刷物との色ズレが減る
  • クライアントとの色認識の食い違いを減らせる
  • 修正の手間を減らし、効率的な制作ができる

まとめ

RGBカラー空間は、デザインや写真における「色の設計図」です。表現したい色を正確に届けるためには、制作目的に合ったカラー空間を選び、最終的な出力に向けて適切に変換・管理していく必要があります。

そして、その信頼性を支えるのがキャリブレーションされたモニター環境です。今日からできる第一歩として、自分が使っているモニターの色域やカラープロファイルを確認してみてはいかがでしょうか。

この記事が、色のトラブルに悩まない制作環境づくりの一助となれば幸いです。

(広報担当)

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