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WEB・チラシ・看板に使うデザインにも関係する「権利」の基本
今回は、「WEBサイト」「チラシ」「看板」など、さまざまなデザインに関わる『著作権』について、一般のクライアント様にもわかりやすく解説いたします。
「お金を払って作ってもらったんだから、自由に使えるんじゃないの?」
「自分が描いたイラストを元にしているから、著作権は自分にあるのでは?」
…実は、それだけでは著作権を自由に扱えるとは限りません。
トラブルになりやすいポイントを押さえて、安心してデザインをご活用いただくために、知っておくべき内容をまとめました。
1. 著作権には2つの種類があります
デザインに関する著作権には、大きく分けて以下の2つがあります。
● 著作財産権(ちょさくざいさんけん)
デザインを「どう使うか」「どこで使うか」を決められる、経済的な権利です。
(例)
- チラシやWEBに掲載する
- 看板として掲出する
- 他社にもデザインを使わせる
これらの行為は、著作財産権を持つ人だけがコントロールできるのです。
● 著作者人格権(ちょさくしゃじんかくけん)
デザインを創作した人の「名前」や「表現」に関わる人格的な権利で、他人に譲渡・売却することはできません。
(例)
- 制作者の名前を勝手に消す
- 大幅に改変する
- 本人の意に反して公開する
これらは著作者人格権の侵害となる可能性があります。
2. 著作権は自動的に発生します(制作者のものです)
日本の著作権法では、デザインや文章、イラストなどは、完成した瞬間から自動的に著作権が発生します(著作権法 第17条)。
商標のように登録をする必要はなく、自然発生的に制作者に帰属します。
つまり、「著作権について話し合っていなかったから、権利はないはず」ということにはなりません。
制作者が著作権の存在を説明しなかった場合は違法なのか?
違法ではありません。
著作権は法律上、自動的に制作者に発生するため、制作者が「自分に著作権がありますよ」と明言しなかったとしても、制作者の権利は有効に存在します。
3. お金を払っても、すべての権利が移るわけではない
たとえ制作費を支払っていても、著作権(とくに著作財産権)は制作者に残るのが原則です。
自由に使用するには、以下のような契約が必要になります。
- 著作権譲渡契約:著作財産権そのものをクライアントに移す契約(別途費用が発生する場合あり)
- 利用許諾契約:媒体・用途・期間を定めて使用を認める契約
4. 用途外の使用は「著作権侵害」になることも
ケース例:
看板用にデザインを依頼 → クライアントが自社HPやSNSに無断で流用
このような場合、契約でWEB用途が含まれていない限り、著作権侵害にあたる可能性があります。
ポイント:
データが手元にあるからといって、自由に使えるわけではありません。
5. クライアントが描いたイラストを元にしていても、著作権は制作者にある
「ロゴの原案は手描きだから、著作権は自分にあるはず」と思われる方もいますが、
完成したデザインには、制作者の著作権が発生します。
たとえ原案がクライアントのものであっても、
- 配色や書体の調整
- デジタル化(ベクター変換など)
- 実用性を踏まえた設計
といったプロの創作性が加われば、それは新たな著作物と見なされるため、制作者に著作権が発生します。
6. よくあるご質問(FAQ)
Q. 看板用に作ってもらったデザインを、HPやSNSでも使っていいですか?
A. 契約にWEB使用が含まれていれば問題ありません。含まれていない場合は著作権侵害となる恐れがあります。
Q. 手描きのイラストを元にロゴを作ってもらったのですが、自分の著作物ですよね?
A. 完成したロゴは別の著作物です。制作者に著作権が発生します。
Q. 名刺や封筒にもロゴを使っていいですか?
A. 契約にその用途が含まれていれば問題ありません。最初にご相談いただくと安心です。
Q. 色やレイアウトを変更しても大丈夫ですか?
A. 軽微な修正でも、著作者人格権に関わる場合があります。変更前にご相談ください。
7. まとめ:デザインは「知的財産」=ルールに基づいて使うもの
WEB・チラシ・看板に使われるデザインは、制作者の創作物(=知的財産)です。
だからこそ、
- 誰が権利を持っているか
- どの範囲・媒体で使ってよいか
を明確にして活用することが、トラブルを防ぐ第一歩となります。
(広報担当)