2026年8月のLINEは、2つの機能追加と1つの不具合でにぎやかだった。バラバラの話に見えて、3つとも同じ一点に向かっている。「便利さにいくら払うか」という話だ。
送信後15分なら、書き直せる
LINEヤフーは8月13日、送信後15分以内ならメッセージを修正できる新機能「メッセージ編集」を、8月中に順次提供すると発表した。1対1トークとグループトークは送信後15分間、Keepメモは6日間が編集可能な時間になる。編集したメッセージには「編集済み」と表示される。取り消すほどではない誤字や言い回しを直したい、というニーズに応えるものだ。
これは地味にありがたい機能だと思う。
送ったあとに自分の文面を読み返して、「言い方がきつかったかもしれない」と急に不安になる。既読がついていないのを確認して、こっそりコピーしてから削除し、角を取った文章にして送り直す——そんな手間をかけている人は、決して少なくないはずだ。
しかもiPhoneには、トークリストで相手を長押しするとプレビューで最新メッセージが読める仕様がある。既読はつかない。つまり、こちらが読み返している間に、相手も既読をつけないまま先に読んでいる可能性がある。そう気づいてからは、送信ボタンを押した直後の数十秒が妙に落ち着かなくなった。
15分の猶予は、その落ち着かなさを引き受けてくれる。編集履歴が「編集済み」として残るのも良い設計だと感じる。何もなかったことにはできないが、直したことは正直に見せる。小心者向けの機能でありながら、誠実さの逃げ道は塞いである。
無料だった機能が、特典に移る
もう一つの発表は、少し表情が違う。
相手のスマートフォンの通知音やバイブレーションを鳴らさずに送れる「ミュートメッセージ」が、8月26日をもって無料提供を終了する。以降は「LYPプレミアム スタンダードプラン」(月額508円から)の会員特典となり、利用にはiOS版・Android版アプリのバージョン26.13.0以上が必要になる。
この機能はこれまで、正式リリース前の機能を試せる「LINEラボ」で無料提供されていた。深夜に業務連絡を送る立場からすると、通知を鳴らさずに済むのは相手への配慮そのもので、なくなると困る類の便利さだ。
注目したいのは、冒頭の「メッセージ編集」も同じ道筋に乗っていることだ。ラボでの提供期間中は非会員を含む全ユーザーが無料で使えるが、2026年秋以降はLYPプレミアムの特典として正式提供される予定になっている。
ラボの位置づけが、「新機能のお試し場」から「有料機能の入口」へと変わってきた。無料で配って使い慣れさせ、手放しにくくなった頃に会員特典へ移す。マーケティングの筋としては真っ当だし、無料であり続けるほうがむしろ不自然だとも思う。
そして、買ったはずのアイコンが戻らない
ところが同じ8月、購入済みの着せかえについて別の事象が起きていた。
iOS 26対応版で、有料で買った着せかえのメニューアイコンがデフォルトのデザインに戻ってしまう。原因はiOS 26の新しいデザイン仕様で、着せかえ側にiOS 26用のメニューアイコン画像が追加で必要になったためだ。この画像が用意されていない着せかえは、標準アイコンが表示される。デザインの崩れも報告されている。
LINEヤフーは6月からこの変更を告知し、着せかえの提供元に対応を求めていた。それでも一部は間に合わなかった。公式着せかえは一部で対応が完了したものの、全体の完了時期は示されていない。クリエイターズ着せかえについては「審査に時間がかかっている」とされ、クリエイター側が更新を望んでもシステムの制約で更新できない場合があるという。ユーザーからは「買った意味がない」「返金してほしい」という声が上がっている。
技術的には、OS側の仕様変更に配信プラットフォームと数万人規模のクリエイターが追随するという、簡単な話ではない。事前告知もしている。それでも、支払いを済ませた側から見えているのは、消えたアイコンと、いつ直るか分からないという回答だけだ。
有料化の説得力は、こういう場面で決まる
便利な機能を有料プランに寄せること自体に、反対する理由はない。開発にも運用にも人件費がかかる。妥当な対価を求めるのは健全だ。
引っかかるのは順番のほうだ。「これから月508円をお願いします」という案内と、「すでに頂いた分は、いつ直るか分かりません」という回答が同じ月に並ぶと、有料化の説得力が削られてしまう。ユーザーが値段を測っているのは機能の便利さではなく、払ったあとに大事にされるかどうかだからだ。
メッセージ編集は、送ってしまった言葉を直せるようにする機能だった。同じ丁寧さが、購入済みの着せかえにも向くといい。細やかな改善がこの先も届くことを、いち利用者として期待している。
(広報担当)