「副操縦士」が「自動操縦」を連れてきた——Microsoft 365 Copilotの新機能に感じた期待と、ちょっとの心配

コラム

この夏もAIの新型が途切れない。ClaudeもChatGPTも版を重ね、7月17日には中国のMoonshot AIが約2.8兆パラメータのオープンウェイトモデル「Kimi K3」を発表した。各社が数か月おきに殴り合うように更新をかけていて、追いかけるだけで一日が終わりそうだ。

その渦中で、日本マイクロソフトがMicrosoft 365 Copilotの説明会を開いた。示された中身を追っていて、期待と、ちょっとした心配が同時に湧いてきた。


日経225の87%が使っている、という数字

説明会でまず示されたのは、日経平均株価を構成する225社のうち87%がMicrosoft 365 Copilotを利用しているという数字だった。集計の時点や対象の取り方によって変わりうる数字ではあるが、桁感としては十分に驚く。

思い当たる節はある。「うちは会社のPCからMicrosoft以外のAIは使えない」——この手の話を取引先の担当者からよく聞く。情報漏洩やガバナンスを理由に、業務端末から外部AIサービスへのアクセスを絞っている企業は少なくないようだ。公表される類の話ではないので断定はできないが、現場感覚として珍しくはない。

つまり多くの会社員にとって、「AIの使い勝手」がそのまま「Copilotの使い勝手」になる。選べないぶん、Copilotの出来が日々の仕事の質を決める。だからこの話は、Microsoftユーザーでなくとも他人事ではない。

ちなみに面白いのは、そのCopilotの中身だ。当初はOpenAIのモデルしか使えなかったが、現在はAnthropicのモデルも選べるようになり、今後さらに増やす計画だと説明されている。外のAIは止めるが、中では複数のAIが動いている。なんとも今っぽい構図だと思う。


「人主導」から一歩進んだ、Copilot Cowork

目玉は、6月に正式提供が始まった「Copilot Cowork」だ。

これまでのCopilot Chatは、タスクごとに細切れの会話が必要だった。Coworkは違う。ある程度詳しい指示を一度出せば、複数のタスクを横串にして、完了まで持っていく。会議資料を作り、参加者に連絡し、日程を調整する——といった一連の流れをまとめて引き受けるイメージだ。

さらに、あらかじめスキルファイル(Skill.md)を用意しておけば、目的を伝えるだけで決まった作業を自動化できる。管理者はスキルとMCP/SaaS接続用のコネクタをパッケージにして配ることもできるという。実演では「Microsoft Build 2026のまとめ記事を作れ」という指示から、Wordドキュメントが出来上がるまでが示された。

掲げられているロードマップも分かりやすい。

  • まず個人がCopilot Chatに質問してみる
  • 次にCopilot Coworkを「部下」とみなして仕事の一部を任せる
  • 最終的に人が「監督」となり、複数のエージェントを編成・育成する

段階を踏ませる設計は、実にMicrosoftらしい。いきなり全社導入を迫らないところに、現場を見ている感じがある。


そして「Autopilots」がやってきた

もう一つが「Microsoft Scout」だ。Microsoftが新カテゴリーと位置づける「Autopilots エージェント」の第1弾にあたる。

こちらはバックグラウンドで常時、自律的に動く。指示を出さなくても定常業務を進めてくれるという。ブラウザ操作の自動化にも対応し、実演では「Build 2026のセッションを探して参加登録し、上司に報告メールを送る」まで自動で行われた。権限やポリシーは考慮するので勝手なことはしない、と説明されている。現在は新機能を先行利用できる「Frontierプログラム」の参加者に限定して提供されている。

ここで、ふと引っかかった。Copilotは「副操縦士」という意味だ。人が操縦桿を握る前提の名前である。そこへ、Autopilot——「自動操縦」がやってきた。

方向性としては自然な進化だと思う。思うのだが、名前の上では「人が主導する」と「機械が自動で行う」が同居している。この座りの悪さは、たぶん現場で説明する側が一番感じることになる。


心配しているのは、名前と、お金

正直に言えば、筆者はMicrosoftのサービス名にたびたび戸惑わされてきた。

2020年4月、個人向け・中小企業向けの「Office 365」がプラン名ごと「Microsoft 365」へ改称されたときも、社内では「契約が変わったのか」という質問が飛び交った。法人向けの一部プランには「Office 365」の名称が残ったため、なおさら分かりにくかった記憶がある。2025年1月には「Microsoft 365アプリ」が「Microsoft 365 Copilotアプリ」へ名称を変え、Officeブランドの行方をめぐって戸惑いの声も上がった。このときMicrosoftは、WordやExcelといったアプリ自体の名称は変わらないと説明している。

そして現在のラインナップである。

  • Copilot Chat/Copilot Cowork/Copilot Studio
  • Microsoft Scout(Autopilots エージェント)
  • Microsoft IQ(その中にWork IQとWeb IQ)
  • Frontierプログラム/Copilot クレジット

もちろん、それぞれに明確な役割の違いがある。並べて説明を読めば筋は通っている。ただ、社内向けの案内文を書く立場に回ると、毎回「これはどのCopilotの話か」を確かめないと一行も書けない。これは製品の出来の話ではなく、伝え方の話だと思っている。

もう一つがお金の話だ。Copilot Coworkの利用には、Microsoft 365 Copilotのサブスクリプションに加えて「Copilot クレジット」が必要とされている。公開されている資料では、従量課金の場合に1クレジットあたり0.01ドルという単価が示されている。まとまった量をあらかじめ購入する選択肢も用意されているが、裏を返せば使うほど積み上がる仕組みでもある。Microsoft Scoutについても、正式提供時には同様にクレジットの消費を伴う見込みとされ、具体的な消費量は本稿の執筆時点では公表されていない。

常時稼働するエージェントが、裏で静かにクレジットを消費していく。想像すると、便利さより先に月末の請求書が頭をよぎる。これは新しい仕組みへの不満ではなく、単に見積もりを立てる側の性分である。


期待していないわけではない。むしろ、日々の道具として育ってほしいと思っている。だからこそ、少しだけ心配している。

Windowsではこれまでも、更新のたびに慣れた操作の置き場所が変わってきた。設定画面がコントロールパネルと「設定」に分かれ、両方を行き来した期間もそれなりに長かった。新しくすること自体は悪くない。困るのは、どちらを見ればいいのか分からない時間が続くことだ。

エージェント化の波も、同じ道をたどらないでほしい。名前を増やすなら、「何が変わっていないのか」も同じ大きさで伝えてほしい。使う側は毎回、機能一覧ではなく目の前の画面と向き合っているのだから。

副操縦士に任せるのは構わない。ただ、任せる以上は、行き先と燃料計くらいはこちらに見せておいてほしい——そんなことを考えながら、次の発表を待ちたいですね。


※本稿で触れた機能名・提供形態・価格は、2026年8月7日時点で公開されている情報に基づいています。これらは変更される場合がありますので、導入をご検討の際は必ず公式の最新情報をご確認ください。また、社内でのAI利用に関する記述は筆者が見聞きした範囲の傾向であり、特定の企業の方針を示すものではありません。

(広報担当)

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